【読書メモ】ワーク・シフト ─孤独と貧困から自由になる働き方の未来図<2025>

休暇中の課題図書を読む。エンジニア向けに書かれたものではないが、シリアルスペシャリストを目指せ、というメッセージはエンジニアの考え方と相性が良い。(もちろん書いてある全てを鵜呑みにすべきではないけれど)

「ある技能が他の技能より高い価値を持つということはどういう場合なのか」という抽象的な切り口は、普段の私は思いつかないので思考を深くするいい機会だった。

コンピューター言語の歴史を学ぶ【書評】コーディングを支える技術

ITシステムを構築する際にいつも問題となることの一つに「どの言語で作るか」があります。iOSはほぼObjective-Cでしか作れないので悩むことはありませんが、多くのシステムはその構築までにどのアーキテクチャを使い、どのフレームワークを使い、そしてどの言語を使うかとの問題がつきまといます。Perl, Ruby, PHP, そして最近はGoなど、どれも特徴があり、どれも万能ではありません。

「コーディングを支える技術」はタイトルと通りのコーディングの本ではなく、どちらかというとコンピューター言語の本です。人が話す言葉が多くの過程を経て変わっていくように、コンピューター言語も様々な変遷を遂げており、それが何故そのように設計されたかを紐解いています。この本を読んだとき、ある人は設計書だと捉え、またある人は歴史書だとも捉えるでしょう。それ故、この本は技術本であることに違いは無いのですが、どのような人が読むべきかなかなか難しい。言語を習熟した人が過去を振り返り未来へと思いを馳せるためにあるような、そんな本でした。一つの言語を習得したと思ったら、読み返すと良いと思います。

普通の産業へ:【書評】Being Geek ギークであり続けるためのキャリア戦略

技術書といえばO’REILLY、というのはエンジニアにとって定番中の定番。私も古くはPerlのラクダ本からお世話になってます。

O’REILLYはイベントにも良く出展していて都度立ち読みしていたのですが、つい先日のデベロッパーサミットでは「10%オフ」と「4000円以上でオリジナルTシャツ」に惹かれて3冊ほど買ってしまいました。まあ当日は近年稀に見る大雪で荷物が増えてしまったことを後悔したのですが、あとの祭りですね。

買う前に3冊はどれもサラッと内容を確認したのですが、最初に目に止まったのがこの本でした。
本全体の方向性としては「Geekが社内でキャリアを積むために理解しておくべきこと」という感じでしょうか。
内容はタイトルとはだいぶ異なり、GeekもしくはNerdが人間的な成長を迎えたときにどのようにあるべきかを書いたものです。元はブログの記事をまとめたもののようで内容は散漫としてるのですが、全般的にはソフトウェア企業・もしくはソフトウェア産業で働くエンジニアが生きていくための戦術がまとめられています。そんな感じなので、「どうやったら最良のコードが書けるか」「どうすれば一生プログラマーでいられるか」という視点では書かれてはいません。

こういう本をエンジニアが読まなければならない、その理由だと私が考えているのは、常に環境は変化するということです。ソフトウェア産業は成熟していき、普通の産業になりつつあります。一方で、自分自身の記憶力は減退し、発想力は衰え、新しいタレントが台頭していく中で、会社のなかで以下に自分のポジションを確立していくか。小さい話ではあるんですが、30代くらいのエンジニアの、次の10年の生き方を客観視できる良書だと思います。

端的に面白かったのは下記の引用の部分でした。

 たとえば「このページにちょっとチェックボックスを追加してくれないかな」と頼むとき、頼んだ側の人間は、それが至極簡単なことだと思っている。「If/Thenとかで、条件分岐をさせればすぐにできるだろう」などと思う。
無邪気なものだが、エンジニアにとっては実に苛立たしいことである。
安易に頼まれたとおりにすれば、仕様が変わってしまう。しかも、ひどい仕様になってしまうことが多い。そして、何より困るのは、頼む側が、こちらの作業の具体的内容を良く分かっていると思い込んでいることだ。「この機能を追加するには、こういう作業をすればいいだろう」と想像し、その想像は正しいと信じているのだ。

いやあ、ほんと。分かっていらっしゃる。

ゲームではないgame:【書評】ウォートン・スクール ゲーミフィケーション集中講義

ウォートン・スクール」と「ゲーミフィケーション」という2つの単語に飛びついてしまったが、良書であった。ウォートン・スクールといえば世界初の、そしてMBAランキングでも1位である最も高い評価を受けるビジネススクール。そして、ゲーミフィケーションとは、所謂新しい「ビジネス」の手法であり、ゲームデザインを人間の行動に応用させる手法である。ウォートン・スクールが新しいビジネスの手法をまとめた本、ということであれば読まない手はない。


本書はゲーミフィケーションの定義から始まるのだが、重要なのは訳者が指摘している

 日本の「ゲーム」と英語の「game」の意味が微妙に異なる

という点が前提、かつ重要となっている。日本人が思い描くゲームより、英語のgameはもっと広く、スポーツや金融・ビジネスでもgameという要素まで意味合いは広がっている。ゲーミフィケーションはゲームではなく、人がビジネスを楽しむ要素を研究して付加することだ。これは、ダニエル・ピンクが提唱する「モチベーション3.0」につながるものだと思う。

 すなわち、ゲーミフィケーションとは「ワクワクする動機付け」である。

どうやって「ワクワクする動機付けをさせるか」については本書はもしかしたら不十分かもしれないが、それでもゲーミフィケーションの概念を把握するには十分であろう。

そして、恐らく「ゲーミフィケーション」という呼び方は適当ではなく、今後言い換えられると予想している。そのうち新しい単語で、こういったマーケティング手法は説明されるのではないか。

ROIの高い本 -【書評】グロースハッカー

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

昨年は例年に比べて本を読まない年でした。私の場合、「本を読む」という行為自体にある程度まとまった時間が必要になるので、仕事やTODOに追われると確保できる時間が細切れになってしまい、本を読んでも頭に入ってこないのです。ということで、ようやく正月休みになって積ん読を消化しているのですが、今年一発目はこれでした。

この本、内容量は非常に少ないのですが、その割には獲得する知識は多かったように思います。多くのビジネス関連書籍が同じ事を手を変え品を変え分量を増やすのに対し、言いたいことだけサラっと書いてあるので、読んだ時間に対する投資利益率が高いものになっています。これがタイトルの「ROIの高い」の理由。内容も大きく踏み込んだものではありませんが、グロースハッカー自体の考え方を理解するのにはコンパクトで良書だと思います。

私自体、グロースハッカーの定義をすこし誤解していたので、正しく理解し直せたという点でも得るものはありました。

さて、この本ですが、グロースハッカーの本だけあっていろいろ取り組みをされています。まずはこちら。

こちら、更新されていなければ表紙の異なる「グロースハッカー」が表示されているかと思いますが、実は今販売しているものは表紙の4/5を占める帯がついています。デザインされたタイトルが小さかったので修正したのでしょうね。ここまで大胆な帯をつける本は知りません。帯が全てを覆わなかったのは裏表紙のバーコードを隠さない為「だけ」だと思いますので、その制約がなければ帯だけ表紙になっていたことでしょう。

また、この本はROIが高いと書きましたが、著書以外の解説などが1/4を占めます。こんな本も今まで見たことがないのですが、クックパッドやZaimについて解説されていてこの部分も面白いです。

この手のものこそ電子書籍の方が合うのではないかと思うのですが、そこは特典でフォローなんですかね。

【書評】アート・オブ・プロジェクトマネジメント

ソフトウェアの開発工程管理は80年代からの蓄積から洗練されており、アジャイル開発などの比較的新しい手法でも多くの成功例を見ることができるが、それでもソフトウェア開発プロジェクトが何事も無く予定通りに終わることは非常に稀である。

何故か。ソフトウェアという括り自体が非常に多岐にわたる産業にまたがっており、飛行機の管制管理とちょっと便利なAndroidアプリの開発では要求条件も手法も何もかもが異なるからである。同じようなソフトウェアでも日進月歩の技術を取り込んで改良を重ねるうちにそれは複雑性を増し、やがて全く違うものになるのに、作り方だけ変わらないわけにはいかない。

こうしてデスマーチが生まれるのだが、英会話のレッスンで先生に We call such a terrible project “death march”. と言ったらこれは海外では通じないらしい。では海外ではデスマーチは無いのかと言ったらそんなことはなかった。

前のプロジェクトでプロジェクトマネージャーをするにあたり、知識を再構成しようと手にとった本だが、読み終わる前にプロジェクトが終わってしまった。その終焉は想像にお任せするが、少なくとも読んでいる間もこの本のお陰でプロジェクト運用の問題に対していくつかヒントを得ることが出来た良書である。ビジョン・スケジュールといったプロジェクトマネジメントでおなじみのものから、テストの観点、コーディングのパイプライン、レビューミーティングから果ては政治力についてまで、今後プロジェクトマネジメントに係る際に参考となる実用的な書籍である。副題にマイクロソフトとあるが、巨大プロジェクトのノウハウは、結局はマイクロマネジメントの集合とも考えられるので、プロジェクトの大きさにかかわらず応用することが可能である。プロジェクトに関与する全ての人におすすめ。