【書評】アート・オブ・プロジェクトマネジメント

ソフトウェアの開発工程管理は80年代からの蓄積から洗練されており、アジャイル開発などの比較的新しい手法でも多くの成功例を見ることができるが、それでもソフトウェア開発プロジェクトが何事も無く予定通りに終わることは非常に稀である。

何故か。ソフトウェアという括り自体が非常に多岐にわたる産業にまたがっており、飛行機の管制管理とちょっと便利なAndroidアプリの開発では要求条件も手法も何もかもが異なるからである。同じようなソフトウェアでも日進月歩の技術を取り込んで改良を重ねるうちにそれは複雑性を増し、やがて全く違うものになるのに、作り方だけ変わらないわけにはいかない。

こうしてデスマーチが生まれるのだが、英会話のレッスンで先生に We call such a terrible project “death march”. と言ったらこれは海外では通じないらしい。では海外ではデスマーチは無いのかと言ったらそんなことはなかった。

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前のプロジェクトでプロジェクトマネージャーをするにあたり、知識を再構成しようと手にとった本だが、読み終わる前にプロジェクトが終わってしまった。その終焉は想像にお任せするが、少なくとも読んでいる間もこの本のお陰でプロジェクト運用の問題に対していくつかヒントを得ることが出来た良書である。ビジョン・スケジュールといったプロジェクトマネジメントでおなじみのものから、テストの観点、コーディングのパイプライン、レビューミーティングから果ては政治力についてまで、今後プロジェクトマネジメントに係る際に参考となる実用的な書籍である。副題にマイクロソフトとあるが、巨大プロジェクトのノウハウは、結局はマイクロマネジメントの集合とも考えられるので、プロジェクトの大きさにかかわらず応用することが可能である。プロジェクトに関与する全ての人におすすめ。

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